産業用ロボットを安定して稼働させるためには、使用環境や動作条件に適したワイヤーハーネスの選定が重要です。
特に可動部では、繰り返しの屈曲や捻回が発生するため、ワイヤーハーネスの品質や設計によっては断線や通信エラーを引き起こし、生産ラインの停止につながる可能性があります。
また、近年はロボットの高速化・高機能化が進み、従来以上に耐久性や通信品質を考慮した製品が求められるようになりました。
本記事では、産業用ロボット向けワイヤーハーネスの役割や求められる性能・選び方・よくあるトラブルと対策をわかりやすく解説します。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスの新規製作や見直しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスとは?
まずは、産業用ロボット向けワイヤーハーネスの基本的な役割や、一般的なケーブルとの違いを解説します。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスの役割
産業用ロボット向けワイヤーハーネスの主な役割は、ロボット内部の各機器へ電力や制御信号を確実に伝送することです。
例えば、サーボモーターやエンコーダ・各種センサーは、ワイヤーハーネスを介して制御装置と接続されています。
これらの配線に不具合が発生すると、
- ロボットの停止
- 誤作動
- 生産ライン全体の停止
につながる恐れがあります。
そのため、産業用ロボット向けのワイヤーハーネスには、単なる配線部品ではなく「設備の安定稼働を支える重要部品」としての役割が求められているのです。
一般的なケーブルとの違い
「産業用ロボット用ワイヤーハーネス」と「一般的なケーブル」の大きな違いは、過酷な使用環境を前提として設計されている点です。
一般的なケーブルは固定配線として使用されることが多く、繰り返しの曲げやねじれを想定していません。
一方、産業用ロボットでは、ロボットアームの動きに合わせてワイヤーハーネスが絶えず屈曲・捻回を繰り返します。
そのため、産業用ロボット向けワイヤーハーネスには、以下のような性能が求められます。
- 高い屈曲・捻回耐久性
- 耐油性・耐熱性
- ノイズ対策性能
- 軽量かつ省スペースな構造
特に、ロボットの可動部ではわずかな断線や接触不良が設備停止につながるため、一般的なケーブルの流用ではなく、用途に適した専用ハーネスを選定することが重要です。
電線・ケーブル・ワイヤーハーネスの違いについては、「電線とワイヤーハーネスの違いや関係性」で詳しく解説しています。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスの加工が難しい理由
産業用ロボット向けワイヤーハーネスは、仕様ごとに個別対応が求められるため、加工難易度が高い製品です。
例えば、ロボットの種類や可動範囲によって、ケーブル長や配線ルート・使用するコネクタの形状は大きく異なります。
また、限られたスペース内に配線を収める必要があるため、高い設計力と加工技術が欠かせません。
さらに、加工時には次のような点にも配慮する必要があります。
- 可動時に断線しにくい配索設計
- 長期間の屈曲に耐える端子処理
- 電磁ノイズを抑えるシールド加工
- 品質を均一化するための厳格な検査
近年では品質の安定化や生産効率向上を目的に、ワイヤーハーネス組立の自動化を進めるメーカーも増加傾向です。
しかし、産業用ロボット向けワイヤーハーネスは複雑な仕様が多いため、自動化設備だけでなく、熟練技術者による最終調整や品質確認も重要な工程となっています。
そのため、産業用ロボット向けワイヤーハーネスを選定する際は、製品性能だけでなく、加工実績や品質管理体制が整ったメーカーを選ぶことも重要なポイントです。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスの選び方と求められる性能
産業用ロボット向けワイヤーハーネスは、ロボットの安定稼働や生産ラインの効率を左右する重要な部品です。
ここでは、ワイヤーハーネスを選定する際に確認したい性能とポイントを解説します。
ロボットの動作条件に合わせて選ぶ
まず確認したいのが、ロボットの動作条件です。
多関節ロボットや高速搬送ロボットでは、ワイヤーハーネスが繰り返し曲げやねじれを受けるため、高い屈曲・捻回耐久性が求められます。
選定時は、
- 可動軸数
- 動作速度
- 屈曲回数
- ねじれ角度
- 連続稼働時間
などを確認しましょう。
また、細径導体や屈曲・捻回に強い撚り構造を採用したワイヤーハーネスを選ぶことで、断線リスクの低減につながります。
高性能なワイヤーハーネスを使用していても、無理な配線では寿命が短くなるため、配線ルートや最小曲げ半径を考慮した設計も重要です。
使用環境に合わせて選ぶ
ワイヤーハーネスは、設置環境に適した仕様を選ぶことも欠かせません。
自動車工場では切削油や潤滑油、食品工場では洗浄剤や薬品、溶接工程では高温環境など、現場によって求められる性能は異なります。
選定時は、以下のような点を確認しましょう。
- 耐油性
- 耐熱性・耐寒性
- 耐薬品性
- 耐摩耗性
- 粉塵や水への耐性
使用環境に適さないワイヤーハーネスを選ぶと、被覆の劣化や断線につながる可能性があります。
設備を長期間安定して稼働させるためにも、現場環境に適した仕様を選定することが大切です。
通信品質を考慮して選ぶ
近年は、工場設備をネットワークでつなぐIoT化やスマートファクトリー化が進み、産業用ロボットにも高速かつ安定したデータ通信が求められています。
そのため、耐久性だけでなく、ノイズ対策性能も重要な選定ポイントです。
工場内では、サーボモーターやインバータなどから発生する電磁ノイズが通信品質へ影響を与えることがあります。
そのため、シールド加工やツイストペア構造を採用したワイヤーハーネスを選ぶことで、通信エラーやセンサーの誤作動を防ぎやすくなります。
配線スペースやコネクタ仕様を確認する
ロボット内部は限られたスペースに多くの配線を収める必要があるため、配線スペースやコネクタ仕様も重要な確認項目です。
ケーブル長や外径・コネクタ形状・端子仕様が適切でないと、組立性の低下や断線の原因となることがあります。
また、可動部ではハーネスが他部品と干渉しないよう、配線経路まで考慮した設計を行うことで、長寿命化につながります。
正しいコネクターや端子の選び方は、「コネクターと端子の違い」の記事で紹介しています。
既製品とオーダーメイド品を使い分ける
産業用ロボット向けワイヤーハーネスには、既製品とオーダーメイド品があります。
標準的な用途であれば既製品でも対応できますが、特殊な動作条件や設置スペース・コネクタ仕様などに対応する場合は、オーダーメイド品が適しています。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
| 種類 | 特徴 |
| 既製品 | 短納期で比較的低コスト。標準仕様に対応しやすい。 |
| オーダーメイド品 | 使用環境や寸法、コネクタ仕様に合わせて最適化できる。 |
特に、「断線を繰り返している」「既製品では仕様が合わない」「設備に合わせて最適化したい」といった場合は、設計段階から相談できるメーカーへ依頼することで、設備に最適なワイヤーハーネスを製作できます。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスでよくあるトラブルと対策
産業用ロボット向けワイヤーハーネスは、過酷な環境下で繰り返し使用されるため、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
ここでは、産業用ロボット向けワイヤーハーネスでよくあるトラブルとその対策について解説します。
断線・被覆摩耗が発生する原因
産業用ロボット向けワイヤーハーネスで最も多いトラブルが、断線や被覆摩耗です。
ロボットアームの可動部では、ハーネスが絶えず動き続けるため、一般的なケーブルを使用すると短期間で断線する恐れがあります。
また、以下のような要因もトラブルの原因になるため、確認しておきましょう。
- 最小曲げ半径を超えた無理な配線
- ハーネス同士や周辺部品との接触
- ケーブルクランプの固定位置が不適切
- 使用環境に適していない材料の採用
特に見落とされがちなのが、配索設計です。高性能なハーネスを採用していても、配線ルートが適切でなければ寿命を十分に発揮できません。
断線を防ぐためには、ワイヤーハーネス選定だけでなく、可動範囲や配線経路を考慮した設計が重要です。
通信エラーやノイズトラブルの原因
近年の産業用ロボットでは、高速通信や精密制御が行われるため、通信エラーやノイズトラブルも増加しています。
工場内には、サーボモーターやインバータ・溶接機など、強い電磁ノイズを発生させる設備が多数存在。
これらの影響を受けると、センサーの誤作動や通信異常が発生し、ロボット停止につながることがあります。
特に、以下のような状況では注意が必要です。
- シールド処理されていないワイヤーハーネスを使用
- 電源線と信号線を近接配線
- アース処理が適切に行われていない
- 高速通信規格に対応していないワイヤーハーネスを使用
こうしたトラブルを防ぐためには、ノイズ対策仕様のワイヤーハーネスを選定するとともに、適切な配線設計を行うことが大切です。
また、設備停止の原因がワイヤーハーネスではなく、コネクタ接触不良やシールド損傷であるケースも少なくありません。
トラブル発生時には、ワイヤーハーネス全体を総合的に点検しましょう。
ワイヤーハーネスを長寿命化するポイント
ワイヤーハーネスの寿命を延ばすためには、製品選定だけでなく、設計・施工・保守の各段階で対策を講じることが重要です。
具体的には、以下のポイントを意識しましょう。
- 使用環境に適したワイヤーハーネスを選定
- 最小曲げ半径を守って配線
- ケーブルベアやクランプを適切に配置
- 定期的に摩耗や損傷を点検
- 交換時期を決めて予防保全を実施
特に、生産ライン停止による損失が大きい現場では、故障してから交換するのではなく、一定期間ごとに交換する予防保全がおすすめです。
さらに、ハーネスメーカーによっては、可動試験や耐久試験を実施した製品を提供している場合もあります。
断線トラブルを繰り返している場合は、実績豊富なメーカーへ相談し、使用環境に最適な仕様を提案してもらうとよいでしょう。
東邦電線工業がワイヤーハーネス加工で選ばれる理由
東邦電線工業では、長年培ってきたワイヤーハーネス加工技術と生産体制を活かし、産業機器向けワイヤーハーネスの加工に対応しています。
ここでは、東邦電線工業が多くのお客様から選ばれている理由をご紹介します。
用途に応じたワイヤーハーネス加工に対応
産業機器向けハーネスは、用途や設備によって必要な仕様が異なります。
東邦電線工業では、お客様から支給いただく図面や仕様書に基づき、さまざまなハーネス加工に対応しています。
例えば、
- 両端コネクタ付きハーネス
- 片側コネクタ、片側半田加工
- 各種端子圧着加工
- ケーブル加工および組立
など、用途に応じた加工が可能です。
また、加工内容や仕様について事前に打ち合わせを行いながら進めるため、品質面や生産面での課題についても相談しやすい体制を整えています。
ワイヤーハーネス組立の自動化で品質を均一化
ワイヤーハーネスは、わずかな加工精度の違いが品質や耐久性に影響を与えるため、安定した製造品質が求められます。
東邦電線工業では、ワイヤーハーネス組立の自動化設備を導入し、品質の均一化を実現。自動化により加工精度のばらつきを抑えられるだけでなく、生産効率の向上や安定供給にもつながります。
一方で、ワイヤーハーネス加工の中には、自動化だけでは対応が難しい製品もあります。
そのため、自動化設備だけに頼るのではなく、熟練技術者による手作業を組み合わせることで、高品質と柔軟な対応力を両立しているのです。
試作から量産・小ロットまで柔軟に対応
ハーネス加工では、「まずは試作品を製作したい」「少量から依頼したい」「量産にも対応してほしい」といった要望が少なくありません。
東邦電線工業では、小ロットの試作加工から量産案件まで幅広く対応しています。
また、
- 試作品の製作
- 小ロット生産
- 量産対応
- 仕様変更を伴う追加加工
などにも柔軟に対応可能です。
設計データや仕様書に基づき、一つひとつの案件に合わせた加工を行うことで、お客様のものづくりをサポートしています。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスに関するよくある質問
ここでは、産業用ロボット向けワイヤーハーネスについて、お客様からよく寄せられる質問を紹介します。
産業用ロボット向けワイヤーハーネスの寿命はどのくらいですか?
ワイヤーハーネスの寿命は、使用環境やロボットの動作条件によって大きく異なります。
例えば、24時間連続稼働するロボットや、高速で繰り返し屈曲・捻回を行うロボットでは、ワイヤーハーネスへの負荷が大きくなるため、寿命が短くなる傾向があります。
そのため、一概に「何年使用できる」と断言することはできません。
断線や被覆摩耗による設備停止を防ぐためにも、定期的な点検や予防保全を行うことをおすすめします。
既設設備のワイヤーハーネス交換にも対応できますか?
既設設備のワイヤーハーネス交換にも対応可能です。
現在ご使用中のワイヤーハーネスの現物や図面・仕様書などをもとに、代替品の製作や仕様変更をご提案いたします。
また、単なる同等品製作だけでなく、
- 屈曲耐久性の向上
- 配線ルートの見直し
- コネクタ仕様の変更
- 使用環境に適した材料への変更
など、現場の課題改善につながる提案も可能です。
「頻繁に断線する」「設備停止を減らしたい」といったお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
少量からでも製作可能ですか?
東邦電線工業では、試作から量産まで一貫対応できる体制を整えているため、開発段階の少量製作から量産案件まで柔軟に対応可能です。
また、試作品の評価結果をもとに仕様を見直し、そのまま量産へ移行することもできます。
開発スケジュールや数量に応じて最適な提案を行いますので、まずはご要望をお聞かせください。
図面がなくても相談できますか?
図面がない場合でも、現物サンプルや写真・使用環境などの確認・必要な仕様を整理しながら、ご相談いただけます。
例えば、以下の情報があると、よりスムーズに対応できます。
- 現物ハーネス
- 使用している設備名や型式
- コネクタの品番
- ケーブル長や使用環境
- 現在発生している課題
また、「断線しやすい」「配線スペースが狭い」といった課題があれば、現状を踏まえた改善提案も可能です。
図面の有無にかかわらず、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
産業用ロボットのワイヤーハーネスは、ロボットの安定稼働を支える重要な部品です。一般的なケーブルとは異なり、繰り返しの屈曲や捻回に耐えられる高い耐久性や、使用環境に応じた性能が求められます。
また、ロボットの種類や設置環境によって必要な仕様は大きく異なるため、使用条件に適したワイヤーハーネスを選定することが重要です。
特に、断線や通信エラーなどのトラブルを防ぐためには、製品性能だけでなく、設計力や品質管理体制を備えたメーカーを選ぶことも欠かせません。
東邦電線工業では、産業用ロボット向けワイヤーハーネスの設計から試作、量産まで一貫して対応しています。既製品では対応が難しい案件や、断線トラブルにお悩みの場合も、お気軽にご相談ください。